押さえておきたい
はじめの6ポイント

遺産分割における3つの方法


相続においては、遺言書がない場合、各相続人間での遺産分割協議において各相続人の相続分を決め、それに従って相続していくことになります。

相続分に関しては、民法で定めている割合があります。これを「法定相続分」といいます。相続人が配偶者と長男・二男の計3名だった場合、配偶者が1/2、子がそれぞれ1/4といった割合です。(以下、この割合でご説明いたします)

「法定相続分」は必ずしも従わなくてはならない決まりではないので、各相続人間の遺産分割協議において、全員の合意があれば自由に割合を変えることも可能です。

よくあるケースとして、奥様が全財産を相続する、家業を継ぐ長男がほとんどの財産を相続し二男は少しの預貯金を相続する、等も全員が合意すれば問題ないのです。

ただし、自由に割合を変えられるといっても、ゼロから考え合意に至るまでには難しい面もあるので、「法定相続分」を基準に微調整を行う遺産分割協議も多くみられます。

「法定相続分」を基準として遺産分割における3つの方法

❶「法定相続分」そのもので相続をする

前述の配偶者と子(二人)の場合、配偶者が1/2、長男1/4、二男1/4の割合で全ての遺産を相続する方法です。この場合、それぞれの遺産について全てこの割合で相続しますので、預貯金などの分けられる遺産は分けますが、不動産や自動車等の分けられない遺産はそれぞれの持分で共有することになります。この方法のメリットは、民法に従う方法なので、公平である点にあります。
一方デメリットは、不可分財産は共有となることで、資産価値が落ちる(活用価値が落ちる)ことです。
※要するに、法定相続分そのもので相続すると使い勝手が悪いので、皆さま遺産分割協議をするわけです。

❷「換価分割」により相続する

「法定相続分」のデメリットである不可分財産の共有について、そのデメリットを解消する方法として不可分財産を「可分」財産に変えてしまう方法があります。分けやすい財産である金銭に変えてしまうのです。具体的には不動産や自動車等を売却してしまい、その売却にかかった経費などを引き残った金銭を1/2、1/4、1/4等と分けるのです。これを「換価分割」といいます。
この方法のメリットは、最終的に金銭を分けるので、公平であり、相続した財産の利用価値も高いです。一方デメリットは、売却・換価するのに費用や時間がかかることに加え、何より相続財産を売却しなければならないことが挙げられます。手間がかかることと、相続財産そのものに対する思い出や思い入れ等を相続できないことがデメリットと言えます。

❸「法定相続分」そのもので相続をする

前項の「換価分割」のデメリットを解消する方法として、売却したと仮定して相続を行う方法があります。
例えば、相続財産であるご自宅が売却した際に4000万円の価値がある場合、実際に売却すれば配偶者は2000万円、長男二男は各1000万円相続することになります。(換価分割)それを、実際は配偶者がご自宅を全て相続し、その代わりに配偶者が長男二男に各1000万円支払うのです。これを「代償分割」といいます。
この方法のメリットは、❶❷のデメリットを避けられることです。
一方のデメリットは、実際に売却したわけではなく、あくまで見込み金額で分割するため、売却金額をいくらと見るかで意見が分かれる可能性があることです。この評価金額に納得感がないと不公平感が残ってしまいます。